トーキョーノーザンライツフェスティバル記念イベント「北欧映画の生まれるトコロ」 その2

前回の続きをお伝えします。

 

特別座談会 「北欧映画の生まれるトコロ」

  • まつかわ ゆま氏(司会)
  • アリニ・バル・エイナソン氏(在日アイスランド商工会議所会頭) IS
  • 森ステファン氏(スウェーデンハウス) SE
  • イェンス・イェンセン氏(デンマーク大使館) DK
  • ミカール・ルイス・ベルギ氏(在日ノルウェー商工会議所専務理事) NO
  • エイヤ・ニスカネン氏(映画・アニメーション評論家) FI

*簡略化のため、講演者は出身国のISO country code(two-letter)で表記します。


「北欧映画の生まれるトコロ」

左から イェンス(DK)、アリニ(IS)、エイヤ(FI)、ステファン(SE)、ミカール(NO)(以上、敬称略)、そして司会のまつかわ氏

 

*講師のユーモアあふれる語り口が再現されていませんが、その点ご配慮の上、お読みください(特に、他の国に対するイメージについて)。

<北欧諸国が幸福度No.1とされるが、その実感について>

  • イェンス(DK) デンマーク人の幸福度は高い。仕事は1日8時間で、時間の融通が利くことが多い。育児休暇も取りやすい。フレキシキュリティな社会で、セーフティーネットもある。生活に不安がない。ただ、秋・冬は暗くて辛いかも知れない。
  • アリニ(IS) 確かに暮らしやすい。冬は暗いが、夏には白夜がある。白夜は気分も変わる。慣れないと、寝付けない人もいる。アイスランドは資源が多く人口が少ない、豊かな国。ただ、食糧が少ないことを心配する人もいる。
  • エイヤ(FI) フィンランド人は幸福度の高さには驚くだろう。フィンランド人は、ブラックユーモアが発達している。冬に雪から車を掘り出しているからかもしれない。エアギター、ノキア携帯をいかに上手く鳴らすか、奥様運び大会などがその例だろう。サウナもあり、森と湖の豊かな自然と触れ合える。
  • ステファン(SE) 確かに、スウェーデンがそんなに幸せなことには驚く。日本は、子育て・仕事・老後など、心配事が多い。スウェーデン人は心配する必要がないし、心配したことがない。国外に出ると、幸せだったと実感する。
  • ミカール(NO) ノルウェー代表として出席しているが、個人的にはデンマークが好きだ。フィヨルド・山・空気など、どれもノルウェーらしいものがいっぱいあったが、自分にとっては少し退屈だったので。でも、ノルウェーを離れて感じるのは、自分は安心・安全だったということ。幸せだったと思う。今は日本で頑張ることに集中している。ノルウェーに帰ることは心配していない。冒険することが許されていると思う。

 

<北欧の社会保障について>

  • イェンス(DK) 年金の満額支給には40年以上の年金加入が必要。
  • アリニ(IS) 年金制度はほぼ同じ。年金以外にも、病院が無料などのサポートシステムが整っている。
  • エイヤ(FI) カウリスマキ映画の世界は、彼が若かった頃のフィンランドを描いている。失業者が多かったり、屋外に住んでいる人がいたり、現代 のフィンランドではない。90年代のノキアの台頭とEU加盟により、フィンランドは変わったが、彼の描く人生の辛さは、現代にも共通する。
  • ステファン(SE) セーフティーネットは存在するが、日本の滞在が長いため、スウェーデンに帰って老後の保障があるわけではない。
  • イェンス(DK) あとは、ビザの問題もある。妻は日本人だが、デンマーク人と結婚しているからといって、無条件でビザが発給されるわけではない。
  • イェンス(DK) 社会保障は、不景気の影響で予算が不足している。年金支給となる、65歳まで働かないといけない。
  • ミカール(NO) 経済は良い方。移民は微妙な問題。移民があるからノルウェーが外に開かれている面もある。自分の母も日本人なので、経済が良くなる方向で、問題が解決されると嬉しい。
  • アリニ(IS) アイスランドでは、タイ人、リトアニア人、ポーランド人が多い。この点、ヨーロッパ諸国と傾向が異なり、イスラムの問題はない。移民は簡単な問題ではないことは同様。
  • エイラ(FI) フィンランドでも映画の中で移民を扱ったものがある。ヘルシンキ首都圏の学校では、2~3割が移民。フィンランド語と母国語を学ぶ機会がある。フィンランドには、フィンランド語とスウェーデン語の、バイリンガルの伝統がある。最近は、ロシア語を重視する動きもある。
  • ステファン(SE) スウェーデンは移民を受け入れてきた伝統がある。重工業の発展に、労働力が不足していた背景がある。自分の小学校時代は、18人中、自分を含むスウェーデン人は5人、フィンランド人4人、他はトルコ人、ユーゴスラビア人などだった。クリスマスに教会に行く行事があったが、クラスの半分は参加しなかった。異文化の問題は、学校で映画を見て議論した。いじめなど、舞台で表現するような話を、映画化している。絵本もそうだが、映画も教育ツールとして活用している。自分は映画と一緒に育ったという印象が強い。

 

<自国以外の北欧諸国に対するイメージ>

  • イェンス(DK) ノルウェーには油田がある。物価が高い。スウェーデン人はユーモアがない。酒に飲まれる。フィンランド人はナイフを振り回してウォッカを飲んでいる。アイスランドは、5カ国の中では少し特別。
  • アリニ(IS) デンマークは食べ物がおいしい。フィンランドはサウナとノキア。言葉が違う。スウェーデンは一番大きい。アイスランドは、スポーツで負けている。ノルウェーは、(人が)フレンドリーで(国が)お金もち。
  • エイラ(FI) フィンランドは言葉が違う。バイキングじゃない。デンマーク人は楽しい人たち。ビールをたくさん飲むし、スモーガスボードも食べる。アイスランドは、昔の北欧のイメージ。温泉やロックミュージックがある。スウェーデン人はまじめで議論が好き。アイスホッケーでは、対抗心がある。ノルウェーは石油があってお金持ち。EUに入る必要がない。
  • ステファン(SE) 自分はヨーテボリ出身なので、デンマークとノルウェーには良く行った。コペンハーゲンには30回は行ったことがあるが、ストックホルムには3回くらいしか行ったことがない。オスロも近い。ヨーテボリは「表側」で大陸的、ユーモアのセンスもある。ストックホルム人はユーモアのセンスがない。日本に来て、初めてアイスランド人と会った。フィンランドのことは良く知っている。最初の彼女はフィンランド人だった。ノルウェーはフィヨルドがあり、お金持ちの国で物価が高い。親近感もある。
  • ミカール(NO) ノルウェーとスウェーデンは確執もあるが、逆に言えば、それだけ仲が良いということ。ノルウェーが兄、スウェーデンが弟のようなもの。デンマークは、人に例えるなら大きな体でにこにこしている、愉快なおじさん。スウェーデンは女性がきれい。フィンランドは、ムーミンがあるのに、サンタクロースまで取ろうとする。サンタはノルウェーのユーレニッセ。アイスランドは行ったことがないので、これから行きたい。